グランド・バビロン・ホテル/アーノルド・ベネット (著) 林清俊 (翻訳)

"夕食にステーキとビールを注文したばかりに、このホテルを買い取る羽目に"

……ってどういうことよ!と興味津々で読む。
舞台は19世紀末のロンドン。世界中の要人も利用するという超高級ホテルに泊まったアメリカ人の大富豪父娘が、些細な出来事からヨーロッパの国同士の陰謀に巻き込まれ、持ち前のヤンキー魂(?)と財力で解決していくというお話……って、何だそりゃ。いやいや、面白かったですよ。
紹介文に"生きのいい冒険小説"とありますが、もうちょっとミステリー寄りかと思っていたので、予想外の活劇に始めは面食らいました。
次々と危機に直面する親子の問題解決能力の高さや八面六臂の活躍等々、やや都合が良すぎるところがあり、敵味方の人間同士の関わり合いが生き生きと描かれていながら、争点である陰謀の内幕に関しては大雑把で説得力に欠ける気もするのですが、トントン拍子に進む展開がいっそ清々しく、そこは目をつぶって楽しく読了。

何となく江戸川乱歩怪人二十面相シリーズやイギリス時代のヒッチコック映画の雰囲気を感じて、著者のベネットが1929年のイギリス映画"Piccadilly"の脚本を書いていることもあり、映画化されていたらいいな、と淡い期待を抱いたものの存在しないようで残念。

グランド・バビロン・ホテル