コントロール/CONTROL (2007年・イギリス他)

私が洋楽にのめり込みだしたのは1981年頃で、イアン・カーティスは既に故人だった。ラジオから流れた"Blue Monday"でニュー・オーダーが好きになり、
ほどなくして彼らの過去を知った。最初に聴いた、彼らの前身ジョイ・ディヴィジョンの曲は、"Love Will Tear Us Apart"と記憶している。
(これが映画監督デビュー作である)アントン・コービンの写真を目にしたのはもう少し後のことで、あの静止画の中の静止画とでもいうか、一瞬を鋭く切り取ったモノクロのポートレート群に心を打たれたものだ。
そのせいだろうか、ビデオグラファーとしての彼の作品はあまり好きではない。
そんなことを踏まえてこの映画を観た。

全編モノクロの映像はスタイリッシュで美しく、演ずる者は皆、実在の人々に成り切るための努力の跡が窺える。
ただ、もうちょっと深層に迫った描き方をしても良かったように思う。
だが、それよりも何よりも。

…いかん、つい妻目線で見てしまう。

まあでも、イアン・カーティスの奥さんによる伝記を下地にした映画だから、それも正しい見方だろう。
イギリスの地方都市に生まれた音楽好きの少年が、とあるライヴに誘発されてバンドを組み成功を夢見る。
若くしての結婚。デビュー。発病。娘の誕生。人気が高まるにつれ次第に募る不安。度重なる発作。不倫。自責の念。
苦悩し続け、重圧に押し潰され、自ら命を絶つという最期。

イアンの妻、デボラは彼の生涯の一部始終を見ていたわけではないが、自分が最もそばにいて相応しい、必要とされた人間だと自負していたはずだ。
外の世界へ出た夫とその仲間から疎まれても、招かれたホームパーティーへ夫を連れ出し、彼女は陰で友人に言う、「私には普通の夫」と。

一番振り向いて欲しい人、もう自分の居場所がその人にないと認めるのは、どんなに辛く惨めなことだったろう(そして、居たたまれないんだ)。

Joy Division - Love Will Tear Us Apart


この写真、好きです(アントン・コービン撮影じゃないけど)。