断絶/TWO-LANE BLACKTOP (1971年・アメリカ)

監督モンテ・ヘルマンの最新作公開に併せて、この映画もリバイバル上映されるという。

よく「地味」とか「物語に起伏や娯楽性がない」など無気力モード満載なように評されるけれど、なかなかどうして熱い映画だと思う。
確かに台詞は多くなく、場面は変わり映えしないとも言える。しかしそれらに退屈を覚えることは全くなかった。

主な登場人物は4人。
改造しまくりの55年型シボレーで賭けドラッグレースをしながら放浪する若い運転手と整備士。
そこにたまたま転がり込んできたヒッチハイク中のヒッピーの少女。
70年型ポンティアックGTOを駆り、歩んできた人生の悲哀を滲ませつつ強がりな中年男。

この2台の車が行きがかり上、目的地までレースをしながら旅をすることになる。
事の顛末から道中に至る、控えめに火花を散らす駆け引きがとても面白い。
車の事しか頭にない若者達は飄々と「カモ」をどう料理するか画策し、ときには卑怯な手も使う。
嘘とハッタリを纏う饒舌な中年男は大人の余裕で友好的に接しながらも常に相手を出し抜くチャンスを窺っている。
いくつもの州を越えて出会う様々な風貌のヒッチハイカー達やストリートレース、ヒッピーに手厳しい南部の住人とのやり取りも、クスっとしたりハラハラしたりと良い刺激になっている。
1人だけ車バカでない少女の行動は、その他3人の思惑や旅の流れを度々エンコさせる。
始終何かに不満げなふくれっ面と、ややガサツな振る舞いが何ともキュート(何となくティーンの頃のジョディ・フォスターを思わせる)で、基本的に若者サイドに張り付きつつ、かと思えば突然オヤジに乗り換えてみたりと、あまり色気はないが小悪魔的な構ってちゃんである。
実はこの物語においてかなり重要な存在なんじゃないかと私は思う。 

彼らの繋がりは路上をいつまでも平行線のまま進み、やがて断絶するときが来てまた走り続ける。
それは少し哀しく、何となく安堵する情景でもある。