鳥/THE BIRDS(1963年・アメリカ)

生物パニック映画の原点とも言われるアルフレッド・ヒッチコック監督の代表作の1つですね。
とうの昔に観たきりで「鳥怖えぇ!!」しか記憶になかったので、いま一度ストーリーを確認するべく観賞。前半のラヴ・ロマンス部分が退屈と言う人もいるようですが、私は大いに楽しめました。ヒロインのティッピ・ヘドレンがとても可愛い。若草色のスーツ姿でツンツンすましていて、だけど着たきりなのでちょっとずつ煤けていく気がしないでもない。いつのまにかネックレスもなくなっていて、クライマックスではついに(身も心も)穴だらけのボロボロに……。

やけにカモメの姿が目に付く日の、サンフランシスコのペットショップで女と男が出会い惹かれ合う。女は男が妹のために探している番のインコ(ラブバード)をサプライズで届けてやろうと思いつく。海沿いの小さな町にある男の家にラブバードの鳥籠をこっそり置いた帰路で、不意に1羽のカモメが女を襲う。追って来た男は女を介抱して、しばらく留まるよう説得して夕食に招待する。妹は歓迎するが、母親───数年前に夫を亡くして以来、情緒不安定で息子から子離れ出来ずにいる───は快く思わない。彼女はかつて恋愛関係にあった息子と娘の担任教師の仲をを壊し、息子がいなくなったら生きていけないという不安に苛まれている。
そんな中、一家は煙突から入り込んだスズメの大群によって危険な目に遭う。やがて鳥の群れが町の至る所で人々を襲撃するようになる。

何故、鳥たちが凶暴化したのか、その行動の理由は一切語られず、理不尽な攻撃に怯え狼狽する主人公らの抵抗は時に歯痒い。
まだ被害が数件にしか及ばない頃、ある者は鳥が人を襲うなどあり得ないと言い、ある者は鳥なんかみんな殺しちゃえ!と吐き捨て、ある者は世界の終わりだーと叫ぶ。現実を目の当たりにした者以外、心のどこかで否定したがっている。だが、とうとう鳥たちに町を蹂躙された後で、ある者に至っては「あんたが来てからこうなった、あんたのせいだ!」と、女に八つ当たりする。何と無茶な。でも、みんな自分が正しいと思いたくて、事が起きれば何かしら原因を見つけてこじつけたくなるのもわかる。何が正解なのかはわかりませんが。

行間を読むじゃないけれど、人々のそれまでの暮らしやそれぞれの絡みから鳥との因果関係を、例えば、連れて来られた2羽のラブバードが実は鳥たちの救世主で、解放するための指令を出している(?)とか、あれこれ探ってみるのもいいかもしれない。

鳥の攻撃と休息のルーティンが終わらない限り、解決策をただ模索するだけの現状は破滅に向かっていくわけですが、不安をなくして強くならねばと葛藤していた母親が、鳥に屈した女を救うことで一歩踏み出せたのが(たとえその先の未来が続かなくても)唯一の希望であったと言えるでしょうか。

鳥 [DVD]