彼らは廃馬を撃つ/ホレス・マッコイ(著)常盤 新平(翻訳)

どうしようもなくやるせない。
大恐慌時代のハリウッドで、そこそこ野心のある映画監督志望の男と、人気映画女優になりたいが厭世的でネガティブ思考の女が、一獲千金と業界のコネを求めて「マラソン・ダンス大会」に参戦する。来る日も来る日も、最後の生き残りを賭けてひたすら踊り続けるという、恐ろしく過酷でバカみたいなイベントです。
当時、実際に行われていて盛況だったそうですが、参加したペアが疲労とストレスで錯乱する姿を見て楽しむという下卑た一面もあったらしい。
主人公の男女も様々な身の上の参加者も、主催者側までが狂騒に振り回され、疲弊していく様子が滑稽で哀れなのですが、思いがけず胸を打たれる言葉や文章があったりして、女がふと漏らす悲しい本音や、男が垣間見るささやかな幸せの瞬間、ラストに交わされる2人の会話がとても美しくてかっこよくて、何より切ない。
そして廃馬とは何なのか?
それがわかったとき、私のやるせなさはピークに達したのでありました。

彼らは廃馬を撃つ (白水Uブックス)