Steven Wilson Live at O2 ABC Glasgow (2) 02/03/2013

オープニングは"Luminol"。昨夜を思い出してつい身構えるも異常なし。ε-(´・`) フー
"Luminol"は後半、壮大なバラードになるときのテオ・トラヴィスのフルートが大好きで(ていうかフルートは彼の扱う器財で最も好きです)、いままでよりはっきり見えるため更に感激しました。彼は自分が演奏しないとき、さりげなくノリノリで自パートを待っている姿がまたクールです。
2曲目の"Drive Home"ではこの日もガスリー・ゴーヴァンのギター・ソロが炸裂。やっぱり観客は虜になってしまいます。このソロ・パートだけ繋いだ映像とか見てみたいw

その次の"The Pin Drop"でもゴーヴァンは軽快なソロで魅了します。しかしそれよりも、個人的にこの曲はサビに圧倒されまして。何て言えばいいのかな、重なり合う音と声が、何かきらめく粒子になって降り注ぐような。それが押し寄せてくる感じがたまらなく心地良いのです。
次は旧作から…と紹介される4曲目"Postcard"。これがリストから外されてなくて良かった。これまでで最もSW氏の弾き語り姿を、キーボード下のリズムを取る足までしっかりと視界に収めて感動が増しました。

しかしながら、この視界良好の場には落とし穴もありました。環境が良すぎて写真が撮れないのです。この会場はとにかく警備がうるさくて、私の席ではカメラを出すと見つかる率が高い。まあ、演奏中の一般人による撮影がご法度なのはよくある話ですが、ここはアートワークすら撮らせてくれません(撮ったけどw)。ていうか、開始前にただスマホ画面を見ている人まで注意されていました。恐ろしい。。
まあ、マナーの問題もありますが、1枚たりとも撮れないのはやはり寂しい…とはいえルールはルール。もやもやしつつ写真は諦めました。
(この件についてはいずれまたちょっと触れたい)

さて、旧作からの曲は他に6曲あって後半は怒涛の連続です。ふと思ったのは、例えば同じ轟音といえども新作とはライヴでの聴こえ方が違う。まあ、エフェクターやその他変えればそうなんでしょうが、それだけでもない気がします。新作の"The Watchmaker"のクライマックスなんかは、そりゃもうエライ迫力だけど、何となく甘い雰囲気もあったりして。
その違いは"Harmony Korine"が顕著かなと思いますが、あのサビの攻め来る轟音と、その荒くれに潜む物悲しさは何ものにも代えがたい風情で、やはりというか特別な感情を抱きます。それらの曲の個性に対してどっちが上とかいう意味じゃなくてね。
"Harmony Korine"といえば、ちょっとクスッとなる場面が。
ガスリー・ゴーヴァンが最後に奏でる、アルペジオから空白を経た後のギターのストロークで、手元を「大丈夫かな〜?」というように覗き込むスティーヴン・ウィルソン。。そういう意図かどうかは知らんが(けど、そう見えるw)、おいおい、あんた昨日のアレを棚上げする気かいと突っ込みたくなりました(もちろんゴーヴァンはバッチリ決めました)w

本編最後の"The Raven That Refused To Sing"。椅子に座って足を組み、歌のない間、視線をやや上に真っ直ぐ前を見据えて微動だにしないSW氏。あの体当たり的表現力とは裏腹の、整然とした緊張感がまた素晴らしくカッコよかったです。
この曲はラストで観客の声援と拍手で大盛り上がりの中をメンバーがアダム・ホルツマンのみ残して退場するのですが、この日の去り際はあえて余韻を残さないような淡白さを感じて、ちょっと不思議に思いました。いま思えばアンコールへの何か伏線めいたものだったのか?…定かではないけど。

スタオベで見送られ、しばらくしてやはり一部スタオベで迎えられステージに戻ってきた彼ら。観客の幾人かはそのまま座ろうとしません。
ここでアンコールについておもむろに語り始めるSW氏。そういえば、ポーキュパイン・ツリーの初期の曲をやるとか言ってなかったっけ?と考えていると、やはりそこに言及してきました。会場がどよめき、我々を試すかのようにSW氏がホルツマンを促すと彼は聴き覚えのあるフレーズを弾きました。歓声が上がり、感極まったのか観客が数人、ステージの下に駆け寄っていきます。
「君達のためにやる」と、始まった曲は"Radioactive Toy"。ここで更に前へ詰め寄る観客が続出。どのメンバーも意に介さず、撮影にはあれほど厳しい警備員もやって来ません。私は一瞬どうする?と考え、そりゃあ便乗するしかないだろうと椅子を離れました。


御免仕る!…という心境で撮ってしまいました。
思わせぶりにアンコールご説明の図。色めき立つ観客がワラワラと。

通常、最前列など行かない自分にとって何とも不思議な環境でした。ステージに向かってほぼ真ん中で、私は柵にしがみつく男性のすぐ後ろにいました。頭の中でエライこっちゃと興奮しつつ、もう一方で「ほう、これが例の裸足ですか」なんて冷静に見ている自分がいます。そして見上げれば、Steven Wilson and bandの面々がすぐ手の届きそうな所にいるのです。
正直に言うと、私はPTの曲の中でこの"Radioactive Toy"をそれほど重要視していません(ギターのフレーズは好き)。しかしこの状況下に於いてその威力に引きずり込まれないわけがない。スクリーンには数十年前の核実験の映像が大きく映し出され、重く力強いギターに合わせてヘッドバンギングする者、身動きせずじっと彼らを見つめる者。皆思い思いに彼らの世界に浸り、"Give me radioactive toy"をSW氏が「歌って」と鼓舞して皆で歌う。奇妙な成り行きだったけれど、とどのつまり、やはりスタンディングは気分がいい。
私にとって、実にレアで不思議で楽しすぎる夜でした。

セットリストはこちら


本日の戦利品。