続・Porcupine Tree/Yellow Hedgerow Dreamscape (Archive material 1984-91)

続きです。
ブックレット中のスティーヴン・ウィルソン自身による解説が興味深かったので、訳したついでに載せます。
背景を知った上で聴くのもまた楽しいというか、ある種の感慨が湧いてくるというか。
例によって訳に怪しい箇所があると思われますが御了承下さいまし。



このアルバムの楽曲は元々2本のカセットテープで発行された、ポーキュパイン・ツリーの初オリジナル・アルバムに先立って入手出来た"Tarquin's Seaweed Farm"(1989)と"The Nostalgia Factory"(1990)であった。
最初に僕がDelerium Recordsと提携したときの案は、両方のカセットテープを2枚組のLPに仕上げて再発することだったが、結局は後にポーキュパイン・ツリーの最初の公式リリースアルバム"On the Sunday of Life..."(1992)になった、最強の素材を1枚のアルバム上に編集して製作されることではるかに良いアルバムになると判断した。

このアルバムのリリースの少し前に両テープは消去され(それぞれ300部が販売された後)、残った曲のおおよそ80分は"On the Sunday of Life..."に含まれておらず入手不可能である。


Yellow Hedgerow Dreamscapeの前エディション

残りのトラックは(同じ時期からのこれまで未聴のトラックを加えて)まず1994年にDelerium Recordsの子会社で2500枚限定CD盤に編集、リリースされた。これらは直ちに売り切れた。
それから1999年に僕は同じ楽曲を、今度はより良い音源(初期時代、CDに用いたカセットのマスターテープよりも)を使い、1曲取り替えて(下記参照)、いくつかのトラック音源に関してより正確に情報を確立して2枚組LP盤用に再編集とリマスターをした。
その後数年間にわたってこれは僕の亡友マイケル・パイパーのGate of Dawn labelにてイエロー(1000部)、ブラック(最少、僅か150部)、そしてグリーン(300部)のヴィニール盤にプレスされた。

マイケルは2007年に亡くなり、僕はこの新しいCD盤を彼に捧げる。


置き換えたトラック

オリジナルのCD盤には元々"Tarquin's Seaweed Farm"のカセットにあったプリンスの"The Cross"のカヴァーが入っていた。1999年に僕はアルバム上の楽曲の全てを困惑から大なり小なりでほぼ見たと言っても過言ではないが、これは僕が入れる気になれなかった唯一の曲だった。それで、"Love, Death and Mussolini"という別の初期リリースのカセットからホークウインドを模倣したものと取り替えた──これは僅か10部かそこらの希少盤(1部だけeBayで売り出されているのを見たことがある)で1990年にリリースされたものだ。この新しいCDエディションのために、僕は修正した1999年のヴィニール盤を聴いていた。


レコーディング

全ての楽曲は比較的に旧式の機材で録音され、当時の僕の非常に初歩的な音楽と製作技術でほとんど即興で作った(言ってしまえば僕は適当にそれを作っていた)。最初期のレコーディングは自家製の(僕の父による)2回目を試せないので常に最初のテイクを使わなければならないという、消去ヘッドがない4トラックのカセット式レコーダーで行われた。これが断片上の「発見」のセンスに磨きをかけたのは確かだが、それは多くのミスを修正出来ずに残さざるを得ない(内部にしこたま入っているのが聴けるだろう)ことも意味した。
後のレコーディングは8トラックと16トラックのオープンリール式テープレコーダーで行われた。いずれの楽曲も非常に多くの人々に聴かれるという意図で行われなかったのは言うまでもなく、ポーキュパイン・ツリーの成果は数年にわたって広くオーディエンスに及んでいる。実際にはその多くが僕が作り出したポーキュパイン・ツリーの原案とほとんど馬鹿げたタイトルで、純粋に耳と僕の友人マルコム・ストックスの娯楽(マルコム客演の曲目が聴ける)のためにやったものだ。ほとんどの作品はほんの数時間か数分で録音されて、それからカセットかルボックスの1/4インチ幅テープレコーダーのどちらかにミックスダウンした。これらはこのCDのために出来るだけベストに綺麗にしてリマスターされているが、音源にかなりのテープヒスがあり、濁った音で却って妙なイコライザーだ。その頃の僕が頻繁にテープを音楽で埋めて、編集して、それからテープを消去してまた始めるという事実がなければ、トラックのいくつかはリミックスが可能だったかもしれない。

ポーキュパイン・ツリーの音楽のコレクター市場のおかげで、"Yellow Hedgerow Dreamscape"の新しいエディションの要求は年々(様々な海賊版が出現して)増え続けるばかりだった。しかし、これらの非常に初期の実験への期待は下げて貰いたい──出来るだけ綺麗にしたにもかかわらず、これはハイファイ・サウンドからは依然として遠く、そしてかなりの楽曲はかろうじて「お遊び」の定義の域を出るのだ。